奥野田ワイナリーはおいしい!

梅雨の中休みのある晴れた日に、奥野田ワイナリーの中村夫妻を訪ねました。 ワイナリーのある塩山は、山梨県勝沼の隣町です。ところで、みなさん、雨宮 敬二という人を知っていますか?雨宮さんは塩山に生まれ、明治中期、全国に鉄道を引くために頑張った、日本の鉄道王と言われる人物です。

ブドウ畑は、急斜面。右手のかわいい山が塩山。その下を、雨宮 敬二が引いた鉄道が走る。

実はもう一つ、雨宮さんが頑張ったことがあります。それは、鉄道視察先のアメリカから私財を投じて、ぶどう苗500種類を待ち帰り、当時、米はおろか農産物のまったく育たなかったこの地に、ぶどうを根付かせようと農業開墾にも力を注いだのでした。そして、ここ塩山にいち早く根付いたのが、ロサ・プリンセスの原料であるデラウエアでした。

山梨県塩山を日本発祥の地として、その後全国に広まったデラウエアは、今日、わたしたち日本人にとって欠かせない夏の果物になりましたが、あの小粒のぶどうには、そんな大きな夢が託されていたのでした。けっこうドラマチックなヤツだったんですね。

この日、ワイナリーに着くと、いつものように中村夫妻が出迎えてくれました。

自然農法でのびのび育っているデラウェア。たわわに実った不揃いなブドウたち。 中村夫婦も新参者の苦労を乗り越えて、のびのびとやっている。
中村 --- 鈴木さん、ぶどう畑のてっぺんでお茶にしましょう。
鈴木 --- そいつあ、いいですねぇ。

てなわけで、中村さんと知子夫人と私の3人は、ぶどう畑のてっぺんにて、「ロサ・プ リンセス・ワインはなぜ美味しいか」についていろいろ話したのでした。

 
垣根式のブドウ畑の脇にバラが。虫に弱いバラは、いち早くそのことを知らせて、ブドウを守る。
中村夫婦が見学したボルドー地方の伝統に習って。
鈴木 --- どうしてデラウエアーでワインを造ろうと思ったのですか?辛口指向の時代にとても甘いワインを造られたからには、それ相当のわけがあったのでは?
中村 --- 実はボクもデラウエアなんてって馬鹿にしてたんです。
鈴木 --- エエー、そうだったんですか。
中村 --- 若い頃は、ヨーロッパのワイン造りにばかり目がいってました。ブラインド・テイスティングして、これボルドーって間違えられるようなワイン造リを目指していましたから。
鈴木 --- ボルドー信仰ってヤツですね。
中村 --- そう、それです。そんな呪縛から解放された時、自分の環境がよく見えてきまして、デラウエアのことも今までの思い込みを捨ててとらえる事が出来るようになりました。
鈴木 --- ハァーン、そうだったんですか。何かどの世界にも通じるお話のようで、とても興味深いですね。 カリフォル二アやオーストラリアだって、ボルドー信仰の時代があったでしょう。伝統のあるヨ−ロッパ・ワインと比較するのも妙ですが、「日本のワインなんか」っていう発想もとてもつまらないと思います。
中村 --- まったくそうですね。これから甲州のワインは面白くなりますヨ。
鈴木 --- それはまたどういうことでしょう?
中村 --- 僕みたいに、ボルドー信仰から解放されたヤツがワイン造りに励んでいるからです。
鈴木 --- ンー、なるほど。それは増々楽しみですね。日本のワインがもっと美味しくなるためには、飲み手の協力も欠かせませんね。ところで、デラウエアというぶどうの特色は?
中村 --- デラウエアは、完熟度がとても高い。そのうえ充分な酸味もあります。自然農法で育ったぶどうたちは、サイズも不揃い。もちろんワイン造りには欠かせない種もあります。こうやって育てると完熟度と酸味がより深まるんです。食用は、種なしにするとか、形を均一にするとかしなければなりませんが、ワイン用はのびのび育ってます。
鈴木 --- 確かにロサ・プリンセスは甘くて、とても酸味があります。ワインが喉を通る頃には、甘さがスーと消えて後味はとても爽やかです。それに加えて何とも華やかな果実香、あっ、デラウエアだという香りがして。シャルドネにしても、セミヨンにしても、ぶどうそのものを体験したことがありませんでしょう。ロサ・プリンセスの香りは、とても懐かしいいろんなことを思い出す香りです。
中村 --- 本当にきれいなラベルですよねぇ。このラベルに相応しいテイストではないでしょうか。もちろん、辛口のワインを造ることもできますが、デラウエア独特の熟度の高さと完熟してもなくならない酸味を充分に生かしたワインということになると、甘口仕上げのほうが良いのです。これは、ドイツワインの発想で、僕はリースリングのワイン造りにインスパイアー(霊感をえる)されました。

*リースリングは、ドイツで栽培されている代表的なぶどう品種で、香りと酸味のバランスがとても良いワインになります。

鈴木 --- なるほど、伝統ある外国の手法をみごとに土地のぶどうで実現された訳ですね。話は飛びますが、オーストラリアの庭なんかもイングリッシュガーデンのコンセプトを自国の植物で実現していますね。
中村 --- そうですか。オーストラリアのワインは国家的に合理的なシステムをつくって取り組んでいます。非常にポジティブです。そして、このロサプリンセスもポジティブに生きている方ほど、楽しまれています。         
知子 --- そうですね。甘口でも辛口でも、それをどう楽しむかというのは、飲む方のクリエーティビティーによるところが大きいわけです。そういう感性が生かせるというのもワインの楽しいところです。それに加えて、このロサ・プリンセスには、テイストとともに味わっていただけるドラマがありますもの。         
鈴木 --- 古代より人々に愛されてきたワインとバラが出会い誕生したロサ・プリンセスのLOVEが大きく膨らんでいくことを願って、乾杯!
テイスティングルームのテラスで。「あー、おいしい」と知子さんの一言。

もっともこの日の乾杯は、お茶だったわけですが....   
ワイン造りに大きな気持ちをもって励む爽やかな中村夫妻と塩山のぶどう畑からお送りしました。8月末HAPPYのメンバーは、デラウエアの収穫をお手伝いに奥野田ワイナリーにおじゃまします。次回はその時のことをお知らせします。   どうぞ、お楽しみに!!